理論在庫とは
理論在庫とは、受注処理や売上処理などを元にして作成された入出庫情報によるシステム上・記録上での在庫のことを指します。
目視で現品を確認した情報ではなく、記録をもとにした数字上でのデータ在庫のことをいい、受注・保管・移動・入荷・出荷・返品など様々な入出荷情報をもとに計算される在庫数量のことです。
この記事では、理論在庫と実在庫との違い、棚卸差異が起こる原因とその対策についてわかりやすく解説していきます。
理論在庫と実在庫の違い = 棚卸差異
記録を元にしたシステム上・記録上の在庫のことを理論在庫と呼ぶのに対して、店舗・倉庫・工場などで実際に数えた在庫のことを実在庫と言います。また、この在庫を数える作業のことを棚卸を言います。
この棚卸を行った結果、理論在庫と実在庫の数が合えば、問題なく在庫管理が行えているということになるのですが、実際の現場では主に入力ミスや処理漏れなどをはじめとしたヒューマンエラーにより理論在庫数と実在庫数が乖離してしまうことが多々あります。
棚卸差異が発生すると過剰在庫や欠品の原因となるため、その原因究明のため多大なリソースを費やすことになってしまいます。
棚卸差異が起こる原因
棚卸差異の原因には大きく分けて二つのミス要因があります。
- 【在庫管理上のミス】
- 仕入れミス
- 入力ミス
- 在庫の整理整頓不足
- ものの動きと処理のタイミングによる差異
- 盗難
- 【棚卸作業によるミス】
- 数え間違い
- 棚卸対象外の商品の混在(上述の整理整頓不足にも通じる)
盗難などの外的要因もあるものの、棚卸差異の要因の殆どが処理上のヒューマンエラーによるものというのが実際のところではないかと考えられます。ではこの棚卸差異を解消するためにはどのような対策が考えられるのかを次に示していきたいと思います。
棚卸差異を解消するための対策
システムの処理と現物の動きをできるだけ同期する
情報の処理と現物の動きを合わせることで、棚卸差異を最小限に抑えることが可能となります。たとえば、入荷や出荷などの動きがあった時点で、すぐにデータベースにも入力するなど、情報処理と現物の動きを可能な限り同期することが重要です。このタイミングが離れれば離れるほど入力内容が増えて、入力ミスを引き起こす原因となります。
とはいえ、現場の業務をこなしながら都度入力を行なっていくのは現実的ではないため、バーコードなどのITシステムを導入することで、より確実に、効率よく在庫管理を行うことが可能となります。
棚卸を短いスパンで定期的に実施する
店舗によっては棚卸は四半期に一度といったケースもありますが、できるだけ短いスパンで定期的に検品を行うことがよいでしょう。
理由としては前述の「情報の処理と現物の動きを合わせる」にも通ずる部分がありますが、実施のスパンが長期化するほど処理内容が増え、管理ミスや仕入れミスなど差異発生のリスクにつながってしまうためです。
みなし出庫の導入
みなし出庫とは、伝票処理を伴わない出庫方法のことを指します。通常入庫と出庫時には伝票処理を行いますが、みなし在庫では出庫時の伝票処理を行わずに実績によって出庫したとみなします。
みなし出庫を導入により、出庫時の伝票処理が不要になるなど業務負担の軽減に繋がるため、ヒューマンエラーの解消が期待できます。
まとめ
今回は理論在庫と実在庫の違い、棚卸差異が発生する原因と対策についてまとめていきました。
棚卸差異率の許容範囲は一般的に5%とされており、理想は2%以下と言われています。棚卸差異が10%を上回ると、店舗や企業のキャッシュフローや資金繰り・原因究明のためのコスト増により自社の財務状況の悪化につながったり、顧客満足度の低下にも起因します。
ヒューマンエラーを従業員一人一人の努力のみで取り去るということは不可能で、誰しも日毎の調子や店舗の混雑度によってミスは出てしまうものです。先にあげたシステムの導入や仕組みの見直しによってヒューマンエラーの要因となりうる業務体系を根本から見直すことが、棚卸差異の解消に繋がり、引いては店舗・企業の売上や。従業員/お客様の満足度にも繋がっていくのかもしれません。